作編曲家 山田悠人 公式Webサイト

作曲家(僕)って本当に必要?

みなさんこんにちは。
お久しぶりです。

今日は、日常の報告ではなく、僕が思う事をコラムとして連ねてみました。
あくまで、僕が思う事ですので、全ての作曲家に当てはまるとは限りませんし、1つの答えが出るような話でもなく、議論する気もないことを断っておきます。

今回のコラムはずばり「作曲家って本当に必要か?」です。

音楽は数千年の歴史が有り、現在に至るまで、多くの作曲家が作品を作り、そのうち優れた作品が歴史に残っています。
僕の作風はクラシック(西洋音楽)なので、ベートーヴェンやドビュッシー、今を生きる作曲家の作品が作風が違えど対等に並ぶ事になります。
ただし、対等でない点も有り、その1つとして、ベートーヴェンやドビュッシーの作品は著作権が切れて社会の共有財産(パブリックドメインと言います)なので、”現在では”お金がかからずに使えたり、権利料が発生していないために安く入手することが可能です。
しかし、今を生きる作曲家の作品は、作曲家が新たに作った(働いたから出来た)ものですので、”現在では”価値を定め、適当なお金をいただくということになります(それを収入とし、生計を立てます)。
新しい作品は特定の人から頼まれて作曲(委嘱)するパターン、社会に流通させて出版するパターンが有ります。
出版している楽譜の値段は値札を見れば分かりますが、作曲を委嘱された際、その時に発生する金額っていくらかご存じですか?
実は、一概には答えることが出来ず、発注を受けるまでなんとも言えないのです。
技術(能力)料の算出方法は作曲家さんによって違いますが、僕の場合は、発注された作品の規模からおおよその作業日数等を検討し、発注者からの注文(例えば、〆切までの期間)を加味して算出、自身で対価を決めています。
ですが、これは技術(能力)料の話であり、本番までのレッスン料(本番だけ立ち会い、練習はおまかせにする時もありますし、1回ならばここに大きな対価を求める(後述の通り交通費は別)作曲家さんは少ないと思います)、そして、それらにかかった交通費(遠方だとプラス宿泊費)や実費はおおよそ見当がつくと思います。
となると、いったい何万円?となります。
紙と鉛筆があれば作曲が出来るんだから、数千円、上手く行けばタダで作曲してもらえるというのはありません。

と、つらつらとお金のことを書きましたが、以上をまとめると”要は今を生きる作曲家は著作権保護期間を終了した偉大な作曲家よりお金がかかる!”ってことなんです。
逆に、パブリックドメインとなった偉大な作曲家さんの作品は安価で手に入るし、そのような作品は数えきれないほどある…
当然、演奏する側は安く楽譜を手に入れれるに越した話はない、新しい作品は高く、古くても優れた作品は安く手に入る…

ここで本題「今を生きる(クラシック)作曲家って本当に必要か?」という疑問が生まれます。
どうなんでしょうね?
実際に『今を生きる作曲家なんていらないね!過去の優れた作品があるんだから、わざわざ高いお金を払ってまで新しく曲を作って貰う必要なんて無い!』という方もいるかもしれません。
正直、(言われたことはありませんが)これを言われたら、僕は怒ると思います。
そりゃそうです、作曲家(僕)がそもそも必要ないと言われているのですからね。
でも、言われたことはないものの、そのように感じる機会は昔から度々体験しました。

そこで最近、どうすれば作曲家としての僕が必要とされるのか、もう一度考えた訳なのです。

現在、世界各地に優れた作編曲家、音楽家が切磋琢磨し音楽活動を展開しています。
音楽家でありふれた世の中です。
しかし、同じ人はひとりとしておらず、僕だって他の音楽家には無い個性を持っていると思っています。
数多くの音楽家の中から僕を選んでもらう僕だけの魅力や惹きつける要素が必須だと思っています。
それらが無いと『わざわざヤマダと音楽する必要とは?』って思わせてしまう気がするんですね。

俺(自演をしない作編曲家)の場合、俺が作編曲し、演奏家に依頼し、それを演奏していただき、音楽を作る事になりますが、依頼する際に(または、仕事が終わってから)『誘われてよかった』とか『一緒に音楽ができてよかった』と思ってもらいたいと思っています。
しかし、そう思ってもらう為に必要な魅力(個性)や要素、人間性があるのか、正直、悩んでいるのも現実なんです…
自己分析が出来ていないのでしょうか…

今を生きる作曲家として、今までにない新しいものを作ることは当然の任務、職務です。
今を生きているという強みは持っています。
如何に僕が新しく作った作品に魅力を感じてもらうか、必要としてもらうか…よく考えなければと思って日々作曲をし、プロジェクトを企画しています。
僕の音楽が誰ひとりとして必要としないならば、作曲活動を辞める、それくらいの気持ちは持っています。

上のお金の件を見ると、僕がお金にうるさい人に見えそうですが、僕はお金の話をするのが(けじめはつけているといえど)好きではなく、事細かにあぁだこうだ言わない性格ですので、ご安心下さい。
特に、信頼のおける若手音楽家からの委嘱は「仕事料が安くても、お互いが音楽業界を盛り上げる為ならばやります、お互い頑張りましょうね!」のスタンスです。

僕の周りだけでも、たくさんの音楽家の方がいらっしゃいます。
業界の第一線で活躍している人から、第一線に登ろうと頑張る人、趣味で音楽を極めようとする人まで、様々な形態です。
しかし、皆さん誰一人として欠けてはならない存在であり、皆さんがそれぞれ違う個性と音楽を持っています。
僕のスタイルは、そのような方々の出演や初演が行われる演奏会(本番)は誘われたり、目に入ったら、極力聴きに行くようにしています。
演奏者のレベルとか、「また今度も演奏会をやるだろうから今回はいいや」とか、演奏会に行くことが利益になるとか、そのような考えや基準を設けて演奏会に行くか判断はしていません。
音楽を演る人は音楽を聞いてもらいたいと思っているから披露する場を設けるのです、そして、二度と同じ演奏はありません。
“誘いを断る事が増えれば、誘われる事が減る”なんて話を聞いたこともありますし…
ただ、仕事の都合上どうしても伺えないという事もあるのはご了承を。
(最近はちょっと立て込んでいて…すみません。)

僕が出演する演奏会を誘う際は、自分に厳しく、やはり、演奏会にわざわざ足を運んでまで聴いてもらう魅力を伝えきれるか、その点を自分にシビアに突き詰めています。
誘うからには、僕自身の魅力や個性を楽しんで頂きたいと思っています。

そんな感じで音楽活動を頑張っていきます、以上です。
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新しい編曲作品を紹介します!
ショパンの《12の練習曲 作品10番》から2曲ほどフルート四重奏に編曲しました。
3パートはフルートですが、1パートはフルートかアルトフルートのどちらかを選択できる様にしました。
ぜひお聴き下さい!
《12の練習曲 作品10 第2番 イ短調 》
https://yutoyamada.net/works/ensemble/12etude-10-2

《12の練習曲 作品10 第4番 嬰ハ短調》
https://yutoyamada.net/works/ensemble/12etude-10-4